版画の技法につきまして
シルクスクリーン | ヒロヤマガタ・初期のシムシメール・鈴木英人の作品に見られる技法です 金属や木製などの枠に張った絹やナイロンなどのフィルムに、感光剤などで図版を謄写します 直接絹や、ナイロンにマスキングの塗料を塗り制作することもあります ヒロヤマガタの絵を見ますとたくさんの色が重なるようにその色彩を誇示しています |
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リトグラフ | シャガール・ミロ・ビュッフェ・アイズピリ等クラッシックなフランス版画がほとんどこの技法を用います 天野喜孝も好んで使う手法です 版画の古典的な手法で、18世紀末、楽譜を印刷するためにドイツで発明された技法として現在に至っています 版には平面の石灰石などを使用し、油性の強い墨、クレヨン、鉛筆などで絵を描いてから、空白部分に水となじみ油をはじく薬品処理を施します こうした石の表面にローラーで油性インキを塗り、インキを付着させると原版が完成します いまは、石灰石に代わって亜鉛、アルミなど金属板が多く使用されています |
ジクレ ジグレ ジークレー |
アメリカ版画を中心に広がりを見せている高画質デジタル印刷です。リトグラフやシルクスリーンなどとは異なり、版は使用していません ジクリー、ジークレーの語源ですが、gicleeとは、フランス語でインクの吹き付けを意味します これは、スクリーンを通さず、キャンバスや版画の紙に毎秒4百万以上、インクのミクロ粒子を、噴射して7万色以上の微細な発色を可能にしてます 非常に繊細な線のタッ微な色彩の変化、色彩の揺れなども逃さず再現することができ、現在最も原画に近い版画制作法といわれています |
アイリス | ジクレと基本的に同様の技法です。プリンターのメーカー名をとってアイリスと呼ばれることもあります |
シバクローム チバクローム イルフォクローム |
カナダのシバガイギ社が特許を取得していることから、シバクロームという呼び名がついています 美術館等が、修復の際、色の保存に用いている技法になります 一般の版画と最も異なる点は、版画が刷られているものが紙やキャンバス布ではなく フィルムという点です 写真の究極の応用と考えればわかりやすいでしょう 写真の場合は、色を定着させる際に、酸とアルカリの反応を利用する点から 酸化(変色)しやすいのですが、シバクロームの場合は、すべての工程において中性の状態で作業するため、酸化しにくいという特徴があります。 同様にイルフォード社(スイス)から商品は、イルフォクロームと呼ばれます |
アータグラフ | 従来の版画は、色彩の再現までは出来ましたが、完全な凸凹までは不可能でした そこに生まれたのが、カナダA.R.T.社の「アータグラフ」です キャンバス上に版が刷られ、版画の表面に凹凸がつけられ、原画の筆づかいを忠実に再現している技法です 工程としては、画像をデジタルスキャンし原画に忠実な色合い色調をつけ、そのうえに コンピューター等を使い、原画の表面の凹凸を読み込みながら版を製作していくところが特色です ラッセンはこの技法を好み、その版画は本画と見ちがえるほどです |
ラッセンの版画の技法について 詳細に説明するページを追加しました |
版画のエディションナンバー(限定番号)につきまして
芸術作品としての版画の価値を守るために、版画は限定枚数だけ刷られます
作家が自分のオリジナル(原画)と比較し、忠実に表現された版画作品であると認めたものだけを 限定部数だけ用意します それからその証明のために 作家自身がサインし 限定番号を記入していきます
版画の余白(多くの場合は左下)に分数が描かれています 分子が限定番号(通し番号)、分母が限定総部数を示しています
一般には 1/250 というように算用文字で記載しますが 作家によりましては ローマ数字を使用することがあります ローマ数字と算用数字(アラビア数字)の相互表記は以下のとおりです
ローマ数字 | 算用数字 | ローマ数字 | 算用数字 |
I | 1 | XXX | 30 |
II | 2 | XL | 40 |
III | 3 | L | 50 |
IV | 4 | LX | 60 |
V | 5 | LXX | 70 |
VI | 6 | LXXX | 80 |
VII | 7 | XC | 90 |
VIII | 8 | C | 100 |
IX | 9 | CC | 200 |
X | 10 | CCL | 250 |
XX | 20 | CCC | 300 |
限定枚数のほかに以下のような ヘッドエディションが加えられた 特別な版画が一般に刷られ、売られています
AP版 (artist proof・英) | 本来は作家用として制作されたものを表しています 現在は販売されている事が多いです |
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EA版 (epreuve d'artiste・仏) | AP版と同じ意味です ※版画によって、APかEAのどちらかが用いられます |
HC版(hors commerce・仏) | 本来は 販売時作品見本用の 「非売品」を意味します 現在は販売されている事が多いです |
PP版(printer's proof・英) | 本来は 制作に携わった版画工房の保存用を意味します 現在は販売されている事が多いです |
さらに おもにアメリカ作家につきまして、上記のヘッドエディションのほかに下記のようなエディションナンバーがつけられることが多いです
どの場所・地域で売られたとか、版画の管理を厳密にしたいという意向があるようです
たとえば ラッセン作品のときのヘッドエディションは次のようにです
S/N版 | サインアンドナンバー版と呼ばれます ヘッドエディションなしの数字だけの作品 |
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GL版 | ギャラリーラッセン版 の意味 直営店 ラッセンギャラリーは ラスベガス・ワイキキ・マウイ等にあります |
CRL版 | クリスチアン・リース・ラッセン版 の意味 |
I版 | インターナショナル版 の意味 |
A版 | アメリカ版 の意味 |